屏風(びょうぶ)とは?構造や数え方、屏風に描かれる画題まで詳しく解説します!

屏風(びょうぶ)とは?構造や数え方、屏風に描かれる画題まで詳しく解説します!

「屏風(びょうぶ)」という言葉は知っていても、現代の日本ではあまり目にする機会が少ないかもしれません。かつて屏風は日常生活で使われる道具であり、部屋を華やかに飾る装飾品でもありました。

また、特別な場を演出する舞台装置としても重要な役割を果たしていたのです。この記事では、屏風の基本構造や数え方、描かれる画題について解説します。

屏風(びょうぶ)とは?

屏風(びょうぶ)とは?

屏風(びょうぶ)とは、部屋の間仕切りや装飾に使用される日本の伝統的な調度品のひとつです。屏風の「屏」には、視線を遮る囲いを意味し、風を防ぐ役割からその名がつきました。

もともと屏風は風よけとしての道具でしたが、時代が進むにつれて装飾品として価値が高まりました。現在では、屏風の美しさと芸術性が評価され、豪華な絵画や工芸品として親しまれています。

また、さまざまなデザインと技巧が施された屏風は、日本の文化と歴史を象徴する重要な品でもあります。

屏風の構造

屏風の構造

屏風は部位ごとに名称があります。

〇扇(せん)

屏風は、扇のように広げたり畳んだりできるため、パネルの面は「扇」(せん)と呼ばれます。この扇を2枚や4枚と連結し、それぞれの面を右から順に「第一扇」「第二扇」と称します。

また、折りたたむ扇の数により、屏風の形状は「二曲」(にきょく)、「四曲」などと数えます。

〇椽(ふち)

屏風の扇を囲む黒い木枠は「椽」(ふち)です。縦の椽は「堅椽」(たてぶち)、上部の横椽は「上椽」(じょうぶち)、下部の横椽は「下椽」(かぶち)とそれぞれ呼ばれています。

堅椽のある扇は「扉」(とびら)と呼ばれ、さらに、横椽のうち扉部分にあるものを「合掌椽」(がっしょうぶち)、扇部分にあるものを「中小椽」(なかこぶち)と称します。

〇縁(へり)

屏風の本紙(ほんし:絵画や書画が描かれた部分)と椽の間に布で飾られた部位が「縁」(へり)です。

縁には、幅の広い外側部分「大縁」(おおべり)と、内側の絵や書画に接する部分「小縁」(こべり)があり、美しい布で装飾され、表装の保護の役割も果たします。

〇双(そう)、隻(せき)

屏風は通常、左右対になった2つで1組の「双」(そう)として数えます。有名な「風神雷神図屏風」は、風神と雷神の屏風が一対となり、「二曲一双」(にきょくいっそう)と呼ばれます。

一方、対になっていない片方だけの屏風は「隻」(せき)という単位で数えます。

屏風絵の画題

屏風絵の画題

屏風の本紙になる「屏風絵」には、さまざまな画題が描かれています。ここでは、主な画題を紹介します。

花鳥画

花鳥画(かちょうが)は、文字通り、花や草木、鳥などの自然や動物を描いた絵画のことです。これらの絵は室内で自然を楽しむ手段として人々に愛されてきました。

花鳥画には、「松」や「菖蒲」など特定の画題を描いた作品や、四季の移り変わりを表現した作品があります。

屏風に四季を描く際は、「右から左へ季節の移り変わりを表現する」という決まりがあります。右隻の右側から春が始まり、中央から夏、左隻の右側から秋、そして左隻の左側に冬が描かれます。こうして右から左へ視線を動かすことで、四季の変化を楽しむことができます。

また、花鳥画には、草花や鳥、猫や蝶だけでなく、「鳳凰」や「龍」など想像上の生き物も含まれます。

風景画

日本の画家たちは、自然の美しさを表現するため、花鳥画だけでなくさまざまな風景も描いてきました。中でも、海辺の松林を描いた「浜松図屏風(はままつずびょうぶ)」は、室町時代に多く制作されています。

また、「富士山」も好まれる画題でした。雄大な富士山の姿は、日本の風景を象徴するものであり、四季折々の姿を捉えた作品が数多く存在します。

春は桜と共に、夏は青空の下で、秋は紅葉に囲まれ、冬は雪化粧をした富士山が描かれ、それぞれの季節の美しさを見事に表現しています。

山水画

墨の濃淡だけで描かれた屏風も存在します。

中国の宋画や禅画に起源を持つ山水画は、余白を大胆に活かし、わずかな画題を墨の濃淡で描かれているのが特徴です。この手法により、風景の奥行きや自然の静けさが巧みに表現されています。

山水画は特に戦国武将に愛され、江戸時代中期には禅僧にも好まれるようになり、影響は広く及びました。

物語

「源氏物語」や「太平記」、「平家物語」を画題とした屏風絵は、安土桃山時代から江戸時代にかけてとても人気がありました。

たとえば、室町時代から安土桃山時代にかけて活躍した絵師、土佐光吉(とさみつよし)が描いた「平家物語図屏風」は、大坂城内の調度品であったと伝えられています。

また、「平家物語」に登場する源平合戦の場面は、多くの絵師によって屏風絵の画題として取り上げられました。これは、軍記物語である「平家物語」が古くから武士の間で親しまれてきたことが背景にあります。

一方、墨の濃淡で描かれた「竹林七賢図」や「達磨図」は、江戸時代に入って禅僧や禅宗に心惹かれる武家に特に好まれました。これらの屏風絵は、物語の情景や登場人物を通じて、当時の文化や価値観を映し出しています。

合戦

「平家物語」や「太平記」に描かれた合戦の場面を想像で描いた屏風絵とは別に、戦国時代から「大坂夏の陣」に至る実際の合戦を写実的に描いた「合戦図屏風」が存在します。「関ヶ原合戦図屏風」や「大坂夏の陣図屏風」などは、徳川家や黒田家など、参戦した武将たちが当時の記憶がまだ新しいうちに作らせたと考えられています。

「大坂夏の陣図屏風」は、大坂城を中心に右隻から左隻へと合戦の経過が詳細に描かれており、逃げ惑う人々や戦闘の激しさが生々しく表現されています。その緻密な描写と迫力ある構図は高く評価され、合戦図屏風の最高傑作と称されています。

南蛮屏風

室町時代後期、日本を訪れた「南蛮人」(ポルトガル人やスペイン人など)は、当時の日本人に大きな驚きと憧れを与えました。「南蛮屏風(なんばんびょうぶ)」は、南蛮人との交易の場面を描き、当時の様子を伝えています。

また南蛮屏風は、日本画の屏風絵の中でも独特の趣を持ち、当時の日本画家の高い画力と豊かな想像力が伺えます。これらの作品は、異文化交流の歴史を物語り、現在も日本各地の美術館に収蔵されています。

屏風とはでよくある3つの質問

屏風とはでよくある3つの質問

最後に、屏風に関する質問にお答えします。

  • 質問1.屏風はいつからあるの?
  • 質問2.屏風の数え方は?
  • 質問3.結婚式に金屏風が用いられる理由は?

それぞれ詳しくみていきましょう。

質問1.屏風はいつからあるの?

屏風は、1〜3世紀の中国・漢時代に風よけの道具として使用され始め、やがて装飾が施されるとともに王族の贅沢品になりました。日本における最古の屏風は、天武天皇の時代である686年(朱鳥元年)に朝鮮半島の新羅から献上されたものです。

現存する最古の屏風は奈良県奈良市の正倉院に保管されている「鳥毛立女屏風」で、8世紀に作られたものです。この屏風には「天平勝宝4年」(752年)の年号が記され、日本産の山鳥の羽毛が使用されていることから、国内で制作された可能性が高いとされています。

平安時代や鎌倉時代に作られた屏風はわずかしか確認されていませんが、室町時代には水墨画や色鮮やかな絵が描かれた屏風が多く作られるようになりました。安土桃山時代から江戸時代にかけては、ほとんどの城に屏風が置かれ、広い部屋を飾ると同時に城主の権威を示す調度品としての役割を果たしました。

近年、屏風の使用は少なくなりましたが、豪華な金屏風は結婚披露宴など祝いの席で多く使われています。

質問2.屏風の数え方は?

屏風は、扇のように畳んだり広げたりできることから、長方形のパネル1枚を「扇(せん)」と呼びます。この扇を2枚、4枚、6枚と連ね、扇は右から「第一扇」、「第二扇」と数えます。

また、パネルの1枚1枚を指す「扇」だけでなく、全体の数を表す単位「曲(きょく)」もあります。たとえば、扇が4枚なら「四曲」、6枚なら「六曲」となります。

屏風そのものを数える単位は「隻(せき)」です。曲との組み合わせで表現するのが一般的で、4曲なら「四曲一隻」、6曲なら「六曲一隻」となり、このとき「扇」という数え方は使用しません。

そして、二隻がセットになった作品を「双(そう)」という単位で数え、「一双」と呼びます。「一双」の屏風を正しい配置で左右に並べた際、向かって右を「右隻」(うせき)、左を「左隻」(させき)と言います。

質問3.結婚式に金屏風が用いられる理由は?

金色は古くから邪気を払う色といわれています。

また、金屏風に使われる金箔は変色しにくいため、永遠を象徴する色とも考えられています。そのため、金屏風はお祝いの場にふさわしい美術品とされました。

江戸時代の幕府御用絵師、狩野探幽(かのうたんゆう)が手掛けた「桐鳳凰図屏風(きりほうおうずびょうぶ)」には、金箔を貼った背景に、左隻には一対の鳳凰、右隻には鳳凰の雛が加わり、親子の鳳凰が仲睦まじく描かれています。

この屏風は、江戸幕府4代将軍・徳川家綱(とくがわいえつな)の婚礼のために制作されたとされています。

まとめ

まとめ

ここまで、屏風の基本構造から描かれる画題まで詳しく解説しました。日本における最古の屏風は686年にまで遡り、美しさだけでなく歴史的価値の高い品でもあることが伺えます。

近年ではあまり用いられる機会の少ない屏風ですが、デザインによってはモダン住宅にも似合います。屏風の構造や背景を知り、さらに楽しみましょう。

なお、次のページでは、衝立・パーテーションを設置する目的や選ぶポイントについて解説しています。

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